Ｆａｔｅ／ｓｔａｙ ｎｉｇｈｔ − ショート・ショート・ストーリー
『衛宮士郎と遠坂凛のバカップル日記』
【更新：10/22】
【平成１７年１０月２２日分】
《あくま、駄目亭主になるのこと》
(お断り)
今回のバカップル日記はオリジナルではなく、
ボリベヤ
様の10月13日分更新絵にインスパイアwされ、Fate本編各シーンを繋ぎ合わせ改変したものです。予めご承知おき下さいませm(＿)m。
「――――ふう」
時計を見ると、じき二時半になろうとしている。
今日は日曜日ではあるが、桜と藤ねえは部活に行き、我が家にいるのは遠坂と俺だけ。
とは云っても、本日は魔術の師としての遠坂から申しつけられている強制休養日。
となると、洗い物と屋敷中の掃除も済ませてしまった以上、特段やることは何もない。
いや、離れ以外でただ一部屋、掃除し残しているところがあるわけで―――
「――――よし、行くぞっ！」
なんで我が家の居間に入るだけでこんな気合をいれなくちゃいけないのかって思うのだが、ともかく相手は「あかいあくま」だ。
用心に用心を重ねたって、用心深すぎることはないだろう――――
――――て!?
なんか、遠坂が寝転がりながら新聞を読んでる。
「――――――――」
言葉がない。
なんでこんな場所で遠坂が寝転がっているのか。
なんであんな見事な太腿を投げ出すようにして新聞を読んでいるのか。
それもすごい無防備な態勢で。
全身から気怠さを漂わせて、呼吸をするのも億劫だ、一度寝転がれば二度と指一本動かさぬわ、という駄目人間っぷりで。
というか意地になってないかあいつ、だらけっぷりが尋常じゃないぞ。
もしかして素なのか。
このよく晴れた日曜の昼下がり。日本中の家庭で、家族サービスも出来ない駄目亭主が繰り広げているであろう、あの微塵もやる気のない態度が素だというのか。
だとしたらまずい、学園のアイドルとしてもまずいが、常に優雅たれという遠坂家の家訓的にもまずい。
「――――ん？ なにか用？」
こちらに視線さえ向けることなく遠坂が云う。
「………………」
用心しながら……いや、もう何に用心しているのか自分でもわからないが……ともかく用心しながら近づく。
「――――――――」
じっと遠坂の動きを観察する。
……凄い。視線だけで活字を追って、首を振る動作さえない。
こいつ、ホントに指一本動かす気はないのか……と、喉を鳴らした時、不意に遠坂の視線が上がった。
「――――――――」
「――――――――」
視線が合う。
俺は手にした掃除機を見せつけるようにして、
「あの、遠坂。この部屋の掃除をしたいんだが――――？」
「いやよ」
この上なく素っ気ない返事で拒絶される。
あまりに身も蓋もない回答に、思わず頷きそうになるが、手にした掃除機の重みで辛うじて踏みとどまる。
「遠坂、本当に悪いんだが――――」
「いまわたしは忙しいの。他の部屋から先にやればいいでしょ」
何処からどう見ても忙しそうには見えない遠坂が云う。
「―――いや、後この部屋だけだからさ、掃除が終わってないの」
「士郎、新聞、一枚捲って頂戴」
―――とりつく島がない。
や、それでも遠坂に云われるまま、新聞のページを捲る俺も俺だけど。
「――――――――」
以前として遠坂は身動ぎ一つしない。
遠坂の横暴っぷりはその後も留まるところを知らなかった。
そのページを読み終えると「士郎、次」と機械的に云うだけ。
ようやく別のことを口にしたかと思えば。
「お茶。熱すぎず、冷え過ぎてないのをね。
お茶請けは江戸前屋のどら焼きじゃなきゃ、好感度がワンランク下がるから」
「………………」
カチンときた。
正直、無謀だなって分かってはいるが、なんだかともかくカチンときてしまったのだ。
いくら遠坂が魔術の師匠であり、こちらに惚れた弱みがあるって云っても、このまま遠坂の言いなりになっていても良いのだろうか？
いま必要なのは、政権交代ではないだろうか……じゃなくって！
この家の家長としての、男としての威厳を見せつけることではないだろうか。
こうなれば“てっていこうせんだ”とばかりに遠坂の背後に回り込み、精神を集中させる。
目の前にあるのは、依然としてだらしなく寝転がったままの、無防備な遠坂の背中。
「――――――――」
鼓動が跳ね上がる。
脈拍は明らかにレートを飛び越えている。
「――――――――」
喉が渇く。
心臓の回転数があがる。
指は緊張で固まったまま。
ゼロかイチか。
それを、思案する時間もなく、
俺はその言葉を告げていた。
「同調（スイッチ）、開始（オン）――――！」
俺は、手にした愛用の掃除機のスイッチを入れた。
(続きは
ボリベヤ
様の更新で)
……こんなのの公開許可を頂けたふじわらさん、どうも有り難うございましたm(＿)m。
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