Ｆａｔｅ／ｓｔａｙ ｎｉｇｈｔ − ショート・ショート・ストーリー
『衛宮士郎と遠坂凛のバカップル日記』 ２００４年５月分
【平成１６年５月２８日分】
《士郎、あくまと雨宿りをするのこと》
放課後の突然の雨。傘を忘れて困っている三枝さんに士郎は置き傘を貸してしまうが・・・
「さてと・・・どうしたもんかな？」
衛宮士郎は一向に降り止む気配のない雨を、下駄箱の脇で見上げている。
「こんなところで誰かを待っているの、衛宮君は？」
「・・・遠坂」
すぐ傍らから上がったのは遠坂凛の静かな声。
「こんな時は自分のポカ癖が本当に恨めしく思えるわね。
ちゃんと傘を持ってきていれば、士郎と堂々と相合い傘で帰れたのに」
そう悪戯っぽく云ったきり凛は、肩幅一つ離れた距離で黙り込んでしまう。
二人の間に―――静かに雨音だけが響く。
「遠坂・・・ごめん」
「藪から棒に、いったい何よ？」
「俺、実は傘を持ってたんだけど・・・」
それ以上士郎に云わせなかったのは―――その口元に突きつけられた凛のしなやかな指。
「云わなくていいわよ。ま、そこが衛宮君らしいと云えば衛宮君らしいんだしね。
そんな士郎じゃなかったら、きっとわたしも好きになったりしなかったんだろうし」
「遠坂・・・」
「それじゃあ、一緒に士郎の家まで走りましょうか？
それから家に着いたら、士郎は責任を取って、わたしにお風呂を用意すること！」
「な、なんでさ!?」
「恋人を濡らしちゃうんだから、それくらい当たり前でしょう？
さ、行くわよ！ ちゃんと最後までついてきてよ、士郎！」
たまにはしんみりと・・・どっとはらい。
【平成１６年５月２７日分】
《あくま、銭湯行きを渋り怒りまくるのこと》
タイガーが空焚きして風呂を破壊したため銭湯に行く羽目になった衛宮家の面々。
しかし凛だけは・・・
「行かないわよ」
「へっ？」
「だから、銭湯なんて行かないわよって云ったの。
それより士郎、その間の抜けた受け答え、なんとかならないものなの？」
「・・・なんでさ？」
「行きたくないから行きたくないだけよ！」
「でもそんなことを云うけど遠坂、広い風呂は好きじゃなかったのか？
家の風呂は狭いからって、最近はうちの風呂ばっかり使ってるし。
銭湯に行けばもっと広いし、賑やかだし、
そうそう、ああいうところだと見ず知らずの人とも知り合いになれるしな」
「何も広いお風呂が嫌いだなんて云ってないわよ。
でもその賑やかで、見ず知らずの人間が沢山いるってところが厭なのよ！」
「・・・そっか、遠坂、必要以上に他人との距離を縮めるのは苦手だものな。
だけど偶にはああいう所で見ず知らずの人と裸で接するのもいいもんだぞ？」
「だから、その他人に裸を見せるってのが厭だって云っているのよっ!?」
「へっ？」
「裸になったら同じ年頃の女の子より胸が小さいって厭でも思い知らされるじゃない！
だから、それが厭だって云うのっ！
それくらいは察しなさいよ、この唐変木っ！」
微乳に悩む(^^;遠坂さんにどっとはらい。
【平成１６年５月２６日分】
《士郎、あくまの瞳から透明な雫を流させるのこと》
洗濯物を干そうと縁側に持ってきた篭の中に《ソレ》を見つけ俺は、大きなため息をつく。
まったく彼女には・・・女としての恥じらいや慎みとやらは存在しないのだろうか？
俺はもはや見慣れてしまったその《女性物の下着》をげっそりした思いで見つめる。
ネットもなしに直接洗濯機に放り込まれたと思しき下着は、洗濯の間じゅう、俺の下着とくんずほぐれつし続けたわけで・・・それくらいの想像力は持って貰いたいと思う。
大体ワイヤー入りのブラジャーをそのまま放りこんでしまって、ワイヤーがひん曲がり、「金欠のところになんて出費をさせるのよ!?」って逆ギレしたのはついこの間じゃないか。
だいたい趣味が悪い、というか無節操なことこの上ない。
時には百円ショップで買ってきたんじゃないだろうかって何の飾り気のないショーツやブラの時もあると思えば、どこで間違って買ってきたのか、ゴスロリのような下着を見せつけながら、
「ふふん！ 《あだるてぃ》でしょう？」なんて同意を求められても困る。
さて、今日の下着はどんなトンデモナイものかと、俺はその生地を取り出してみる。
しげしげと、顔の前で広げたみせた《ソレ》は・・・花柄の白だった。
ショーツにもブラジャーにも、可愛らしく繊細なレースやフリルがついていて、花柄の模様が透かしみたいに入っている。
疑いようもなく・・・夢見る女の子が着けるような、少女チックな下着だ。
「・・・はあ、まったく今回はなんだってこんなにも似合わないものを。
あれでも自分が《女の子》だって主張したいんだろうけど・・・って遠坂っ!?」
音もなく背後に現れた遠坂に、怒りのオーラを纏う遠坂に、俺は文字通り飛び上がる。
「待て待て待て！ 誤解してるようだから云っておくがな、何度もやめろって云っているのに
それでも《藤ねぇが》勝手に自分の下着を洗濯機の中の放り込んじまってだな、
だから俺はやむなく・・・って、なんで遠坂が泣いてるんだよっ!?」
「・・・知らない！ 折角士郎のために頑張って可愛い下着を選んだのに！
もう士郎なんか、二度と下着を見せてあげないんだから！」
「いや、だって今まで一度も見せて貰ったことないし・・・って、えっ!?」
泣きながら走り去る凛を呆然と見やることしかできず、この後、必死になって凛のご機嫌回復に苦闘する士郎に思いを致してどっとはらい。
【平成１６年５月２５日分】
《あくま、仮病の末に士郎を押し倒すのこと》
士郎を《お相手》にした淫夢を見てしまったあかいあくま。当然士郎の顔を面と向かってみることも出来ず、真っ赤になって逆ギレしますが、それを見た士郎は凛が風邪だと思いこみ・・・
「・・・氷枕、濡れた手拭い、水差し、体温計、そして綺麗に剥かれた林檎、か。
もう完璧な病人スタイルね。はぁ・・・どうしよ？ これじゃあ、今更・・・」
「遠坂、起きてるか？」
「!? お、起きてるけど、なによっ!?」
「良かった、まだ寝てなかったんだな。入らせて貰うぞ。
早く病気が良くなるように、こんなモノを作ってみたんだが・・・」
「・・・この匂いって、ひょっとして？」
「そう、卵酒だ。これで十分に身体を温めれば風邪なんか一発で直っちまうぞ」
で、十数分後。
「しろぉ〜、わたし、汗かいちゃったぁ〜、身体拭いてぇ〜」
「ば、馬鹿！ そんな無防備に、パジャマのボタンを外しながら近付いてくるな！」
「・・・士郎は病人のお願いを聞いてくれないの？」
「こら、目を潤ませながら近付いてくるな！ 耳元に熱い息を吹きかけるな!?
・・・って、遠坂っ！ おまえ、絶対に酔っぱらってるだろ!?」
「そんらわけないれしょ？ たったあれらけのお酒れよっぱらうらんれぇ〜」
「酔ってる、絶対に酔ってるぞ、遠坂っ！ だから、そんなに身体を密着させたら！」
「士郎は・・・わたしが濡れたパジャマを着たままで風邪をひいちゃってもいいの？」
「馬鹿っ！ そんなわけあるかっ！」
「だったら・・・拭いて。お互い身体の隅から隅まで見あった仲じゃない？」
「なっなっなっなっなっ！・・・・・・って、ちょっと待て!?
さっきの『風邪をひいちゃっても』ってのはなんだよ!? 遠坂・・・ひょっとして!?」
「・・・あっ!?」
うっかりスキルにどっとはらい。
【平成１６年５月２４日分】
《あくま、くわばらくわばらと唱えるのこと》
「うわぁっ、流石に今の雷は近かったよな。・・・ん、どうした、遠坂？」
「な、なんでもないわよっ！」
「それにしては、その格好は・・・・って!?」
再び激しい閃光と轟音。
「・・・・・・なあ、遠坂？」
「・・・・・・なによ？」
「いくら雷が怖くても、流石に今時《そんな格好》をするヤツはいないと思うぞ」
「し、仕方ないじゃない！ まだほんの子供頃にそうやって教わっちゃったんだから！」
「それって教えたのは、ひょっとして・・・」
「・・・そうよ、綺礼のヤツよ。
あいつ、わざわざ雷の日を選んでは、うちにやって来て
『ちゃんと隠しておかないと、雷様が凛の可愛いお臍を取ってしまうぞ』
だなんて、繰り返し繰り返し云うんだもの！ トラウマにもなるわよっ！」
「・・・・・・・・・(ﾎﾞｿｯ)言峰グッジョブ！」
「士郎、今わたし・・・なんか聞き捨てならない言葉を聞いた気がするんだけど？」
「げ、幻聴じゃないのかな？
そうか、なるほど。《あの時に》遠坂がお臍が弱いのはそういうわけか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・よっぽど、命が惜しくないみたいね、衛宮君は？」
お臍プレイに(ｦｲ)どっとはらい。
【平成１６年５月２１日分】
《番外編 宣伝 あかいあくまスレ！》
「えへへ、キスしちゃった」
「――うん、それじゃ、そういうのを抜きでしよ！」
いたずらな少女の言葉が、夜の静寂が支配する衛宮邸の一室にこだまする。
魔術の名門遠坂家のご令嬢が、今日もあくまのような邪悪な笑顔で、将来背が高くなるであろう士郎を弄り倒していく。
汚れを知らない心身を包むのは、深紅の私服。
スカートの中身は見せないように、黒のニーソックスは脱がされないように、ゆったりと士郎を焦らすのが彼女のたしなみ。
もちろん、士郎の大切なところを見て「ちょっ！ なによそれーーー!?」などと特大フォントで叫ぶといった、はしたないあくまなど存在していようはずもない・・・ことはない(^^;。
あかいあくまスレ。
2004年１月26日誕生のこのスレは、元は《いじわるで、照れ屋で、プライド高い、小悪魔で、主人公の座を脅かしそうな勢い》な彼女のことを皆で語るためにつくられたという、伝統あるキャラスレである。
葉鍵月猫揚板。過疎板の面影を微妙に見せつつあるこの板で、あかいあくまファンに見守られ、《夕焼けの校庭》から《終業式後の二人以外誰もいない教室》までの一貫萌えが楽しめるという凛萌えの園。
スレは移り変わり、スレタイが【小悪魔】遠坂凛【お嬢様スレ】から三回も改まった【ニーソックスの】遠坂凛【あかいあくま】の今日でさえ、毎日巡回し続ければ温室育ちの純粋培養凛萌えが箱入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重なキャラスレである。
【平成１６年５月２０日分】
《あくま、大切なモノを傷物にされるのこと》
「ダメ、士郎っ！ もっと、もっと上よ！」
「こ、この辺か、遠坂？」
「違う、行き過ぎよ！ そう！ もう少し、もう少しだけ下！」
「遠坂、オレ、もう、もうこれ以上・・・もちそうに・・・ない・・・」
「情けないわね、まだ始めたばかりじゃない！
きゃっ!? 馬鹿っ！ なんでそんなところにツッコもうとするのよっ!?」
「仕方ないだろ、こんなのまだ慣れてないんだ！」
「これ以上、私の大切なモノを傷物にしたら、アンタ、どうやって責任をとるつもり!?」
「き、傷物って、遠坂、おまえなっ!? ・・・って、うわぁっ!?」
「し、士郎っ!?」
「痛っっっっっ。遠坂、お願いだからこういうことはもう少し前に云ってくれ。
幾ら何でも台風接近中に、この家の屋根の修復をやるのは自殺行為だ」
「・・・わ、悪かったわよ。だけどこんなの頼めるの、士郎しかいないんだもの。
それにこの家は・・・父さんが残してくれた大切な・・・大切な・・・」
「遠坂・・・・・・」
「というワケで修理の続き、お願いね、士郎！」
「やっぱりそういうことになるんかい!?」
ありがちネタだけど、どっとはらい。台風には気をつけましょう。
【平成１６年５月１８日分】
《あくま、牙を研ぎ、標的を窺うのこと》
「おはようございます、シロウ」
「・・・ああ、おはよう、セイバー」
「朝食の準備はもう出来ているようですね。それでは凛を起こしに・・・」
「・・・・・・いや、今朝はいい。遠坂なら、ほら、もう机の前にいるから」
「なっ!? 凛がこんな朝早くから!? しかも新聞に目を通しているだなんて！
シロウ、まさか！ なにか魔術絡みの事件でも起こったというのですか!?」
「いや、全然そういう事じゃなくて・・・情けないけど、俺にはきっと一生縁のない話。
・・・セイバーなんかは昔、逆に貰っていた側だったろうしな」
「？？？ では凛は朝から眼鏡まで掛けて一体何を読んでいるのですか？」
一心不乱に、そして時折うっとりしたような表情で紙面を見続ける凛。
その背後に回り込んだセイバーが見た活字には、次のようにあった。
『 高 額 納 税 者 番 付 発 表 』 と。
士郎のそちら方面での苦悩に思いを致して、どっとはらい。
【平成１６年５月１４日分】
《番外編−あくま、美綴綾子にそそのかされるのこと》
「・・・ちょっと美綴さん、《ここ》に書かれてることが本当に《男の子》の《率直な願望》なの？」
「その如何にも胡散臭げな言い方は心外だな。
遠坂が上手く関連サイトを巡回できないって云うから替わりに《ここ》を見つけてやったのに」
「そりゃあそうだけど・・・いくらなんでも《ここ》は極端な気がしない？」
「でも遠坂、中途半端なのは嫌いだろ？」
「そりゃそうだけど・・・士郎が本当に《こんな格好》が好きだなんて・・・」
「甘い甘い！ そんなこと云っていると他のヤツに衛宮を取られちまうぞ！
というわけで、まずは定番のこれなんてどうだ？ 《新妻エプロン》」
「だ、誰が新妻なのよっ!? ・・・でもこれくらいなら、明日にでも・・・」
「その調子その調子。次はこれ、《メイドさん》スタイル」
「・・・ねえ？ なんでこのメイド着、極端にスカートが短かったり、胸元が妙に空いてるの？」
「気に入らない？ じゃあ、次。《ブルマ＆ニーソックス＆猫耳(お弁当付き)》」
「・・・今時ブルマなんて全滅してると思うんだけど？」
「希少価値があるからこそ、男はそこに憧れるんだよ！」
「・・・それ以前に何？ この 《可動型猫耳》って？」
「ま、犬の尻尾みたいなもんだ。遠坂の気持ちは時々分かりにくいからな。
男側からすれば、《感情パラメーター》みたいなもんだろうよ。
でも猫耳が気に入らないって云うなら、《兎耳バニーさん》もあるぞ
この《私、寂しいと死んじゃいます》ってところが、男の保護欲を誘ってだな・・・」
「綾子、あなた・・・・・・私を馬鹿にしてるでしょ？」
「いや、個人的にわたしはコスプレした遠坂が見たかっただけで。
まだ諸々定番が抜けているな。チャイナ、ゴスロリ、巫女さん・・・。
あ、でも遠坂だと巫女さんはイメージ的にちょっと問題ありかな？」
「綾子、アンタねぇっ!?」
相変わらずオチはないけど、どっとはらい。
【平成１６年５月１３日分】
《あくま、酒を飲みて失敗するのこと》
士郎、セイバー、桜揃っての宴会で、酔っぱらった挙げ句、暴走したあかいあくま。
「と、遠坂っ・・・オ、オレ、もう、これ以上遠坂に取られたら、空っぽに・・・」
「やらぁー、しろぉー、しろぉーのあつくてしろいのぉ、もっとーちょおーらい」
「ホントに！ 飲めない癖に調子に乗って飲む遠坂が悪いんだろ!?
ほら、酔い気醒ましがわりに、熱いホワイトシチュー、全部持ってけ。
まったく！ 俺の食べる分が全部なくなっちまったじゃないか！」
で、翌朝。
「・・・ううっ、頭が割れるみたいに痛い。しろー、なんか用意して」
「まったく！ 飲み過ぎるからだぞ。ほら、このあさりの味噌汁でも飲んでろ！」
「ありがと。・・・・ぷはぁー、これは効くわね」
「どこかの親父かよ、そのリアクションはっ!?」
「・・・その様子じゃ先輩、昨日の約束は覚えてないみたいですね？」
「ん？ なに、桜？ 私、なんか・・・約束したの？」
「先輩、昨日約束してくれたじゃありませんか！ お酒を飲んで暴れしまったお詫びに、改めて新都のホテルで部長就任祝いをしてくださるって！」
「・・・云われれば、そんなことを云ったような気も・・・」
「忘れて貰っては困る、凛。私はそのホテルで供される高級海鮮料理というものに非常に興味を惹かれたのです。約束を違えるのは魔術師としては最大の禁忌だ！」
「わ、分かったわよ！」
「それから昨日の先輩は、ホテルでの食事の後、私が好きな服をどれでも買って下さるとも」
「だから、分かったわよ！ 魔術師に二言はないわよ！
セイバーの好きな料理でも、桜の欲しい服でもなんでも買ってあげるわよ！」
「有難うございます、先輩」
「マスターが魔術師としての心得を持つ人物たることを再確認できて私も嬉しい」
「ううっ、こんなことなら調子に乗って飲み過ぎるんじゃなかった」
「・・・落ち込んでいるところを、云いにくいんだがな、遠坂。それで俺との約束は・・・」
「ああ！ こうなったらもうなんでも聞いてあげるわよ！
だから、アンタはなに!? アンタとはどんな約束をしたって云うのよ!?」
「いや、俺のはそんな大それた約束じゃないんだ。
そう、本当にたいした事じゃないんだ。
ただ遠坂が・・・俺のためだけに一日メイドさんになってくれるってだけの事なんだから。
あ、但し当然メイド服＆猫耳付きで。いや、兎耳付きでも全然構わないぞ、俺は！」
「・・・・・・あまり調子に乗っていると、百倍返しにしてあげるわよ？ 衛宮くん」
オチはないけれど・・・どっとはらい。
酒ネタに上手く繋いで頂いた#134氏に感謝。 それと#147氏、期待してます。
【平成１６年５月５日分】
《あくま、ウイルスと対峙するのこと》
「ちょ、ちょっと！ なんなのよー、これはっ!?」
「ど、どうした、遠坂!?」
「士郎！ 何なのよ、このパソコンはっ!?
さっきからネットに繋ぐたびに『Time before shutdown : 00:00:30 』ってメッセージが出て、勝手に電源を切っちゃうわよ!? 金欠なのに高いお金を出して買ったのに！
まさかこれ、不良品なんじゃないでしょうね!?」
「………あのな、遠坂。俺、先月このパソコンを買って設定した時に云わなかったっけ？
こまめにアップデートしろって。確か連休前にも同じ事を云ったと思うぞ」
「？？？ ………アップデートって、なに？」
「………はぁー。そうだよな、遠坂って電化製品の説明書を読むタイプじゃないものな」
「な、なによ！ その呆れたような物云いは!? 大体どうしてこんなことになるわけ!?」
「そうだな、魔術師風に云えば、そのパソコンを動かす《式》にミスがあったってこと。
その間隙をついてコントロールを乗っ取ろうとする《式》がネットに流れることがあるんで、未然に本来の《式》の綻びを補う為にするのがアップデートというわけ」
「じゃあ、なに？ このマ○クロソ○トってところは、金ぴかの癖に、そんな不完全な《式》を積んだ製品を平然と売ってるってこと!?
あったまきた！ 乗り込んで抗議してやるっ！」
「わぁ、わぁー、落ち着け、遠坂。流石にそれはマズい。いろんな意味でマズすぎる。
駆逐ツールも出ているみたいだし、修復にそんなに時間は掛からないから落ち着け」
「わたしは、いま！ このパソコンを使いたいのっ！」
「？？？ 遠坂、結局人気投票後は殆ど電源すら入れてなかったんじゃないか？
それがなんで今日に限って、ネットに繋ごうなんて？」
「うっ！ そ、そんなことはどうでもいいじゃないっ！」
「いや、どうしても調べたいことがあるんなら、俺のパソコンでも使って」
「………(ﾎﾞｿｯ)結局この連休中、後始末やら修行で何処にもろくに出かけてないでしょ？」
「………はっ？」
「だからっ！ 黄金週間の最終日くらい、恋人らしく過ごせる隠れた良いスポットがないかと思って調べようとしただけよ、この朴念仁！」
バカップルに、どっとはらい。
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