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遠坂凛と衛宮士郎は、魔力を通じて繋がっている。
その在り方自体は、魔術師の一族や師弟の間ではさほど珍しいものではない。
魔術師という人種が信頼できるのは、自分の分身とも云えるその身内だけだからだ。
そして魔術師は身内の人間に危機が迫った時にのみ、普段は背を向けている外界へと積極的に介入してくるのだ。
もっともこの二人にとっては、魔力的な繋がりなど、あくまで二の次でしかない。
彼らが魔術師であると云うことに意味があるとすれば、それは彼らが互いに魔術師でなかったらばこうして巡り会い、触れ得ることはなかった、という一点においてのみだ。
衛宮士郎の魔力行使を感知した凛は、即座に屋敷を飛び出していた。
彼女が愛している少年が魔力を行使した時点で、彼が何かしらのトラブルに遭ったに違いないのだから。
自分ではない他の誰かのために、少年が命を賭けようとしているのは疑いようのないことなのだから。
けたたましく鳴るサイレンで、迷うこともなくその現場に駆けつけた遠坂凛が見いだしたのは、未だ眼前で繰り広げられた“奇跡”を信じられず呆然と立ち尽くす消防士たちと、その円環の中で座り込む衛宮士郎の姿。
服どころか、髪まであちこち焼け焦げ、しかし手当を受けるでもなく、ただひたすらその胸の中で“何か”を抱きしめているようにしている。
ようやく我に返った消防士達が繰り返し、抱きしめたものを放すよう声を掛ける。
それでも効果がないと見るや、強引にその“何か”を引き剥がそうとするが、士郎はその手を跳ね除けて、貝のように更に縮こまってしまう。
「ちょ、ちょっと、アンタ！ 一体何をやってるのよ!?」
野次馬を強引に掻き分けて辿り着いた凛は、慎重にそう声を掛けながら、横から少年の顔を覗き込んで愕然とする。
何故なら、その衛宮士郎は――――
『ヲカシガタキモノ』 第３話
「士郎！ 士郎！ 聞こえてる!? 絶対にそのまま気を失うんじゃないわよ！」
死すとも離さじと抱きしめていた子供を、魔力まで使って無理矢理引き剥がした遠坂凛は、士郎の手を曳いて逃げるように衛宮邸へと戻ってきていた。
半ば意識を失った状態の士郎を寝室まで連れこんで、遠坂凛は改めて息を呑む。
布団の上で横たわる衛宮士郎の身体に、目立った外傷は………ない。
これならば一般人の目からすれば「奇跡の生還」に映るだろう。
しかし………
「冗談じゃないわよ！
なんでよ！ なんでそんな知識なんてある筈のない衛宮くんに、こんな“感応者”紛いのことができちゃうわけ!?」
そう、衛宮士郎の身体からは大切な物が、人を人たらしめている生気がごっそり削げ落ちていた。
魔力ではない。
衛宮士郎は自分が救い出した子供に、その生命力を分け与えていたのだ。
恐らく士郎が救い出した時点で、あの子供は実際には殆ど息絶えていたのだろう。
そして今夜の衛宮士郎には、十年前の“あの日”衛宮切嗣の手の中にあったエクスカリバーの鞘もなければ、今次の聖杯戦争開幕時に遠坂凛が持っていた家宝の宝石もなかった。
まして今の士郎に尽きかけている生命を、己の魔力を切り貼りして補うなんて芸当が出来るわけもなく、目前の瀕死の子供を助ける為に少年が差し出せるのは、己の生命力のみ―――。
「士郎！ 辛いとは思うけれど、これを呑み込みなさい！」
凛は水差しの水と一緒に、失われた生気を補うべく強引に宝石を飲み込ませようとする。
だが、生命力と共に乾涸らびた士郎の喉は、侵入しようとする異物を受け付けない。
「………グホホッ！ ………グハァッ！」
それどころか異物に耐えかねて、士郎のもう何もない筈の胃袋から胃液が溢れだし、喉を伝わって逆流してきてしまう。
「！」
遠坂凛の決断は早かった。
躊躇いもなく水と一緒にその宝石を口に含んだ凛は、そのままその唇を、士郎の唇へと強引に押し当てる。
「!?」
―――強引に舌を絡めるように士郎の腔内に押し入った凛は、その最も深いところに辿り着くと、そのまま宝石を喉頭の奥へと捻り込むように押し込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…………なんとか、山は越えたわね」
宝石を飲み込んだお陰で幾ばくか生気を取り戻した士郎を確認し、ようやく凛は安堵の溜息をつく。
しかし、依然として布団の上に横たわる士郎の呼吸は激しく、時折声にならぬ呻き声を漏らす。
更に異常なのは、衛宮士郎の身体からは一滴の汗も噴き出ていないことだ。
自律神経の機能が麻痺し、発汗作用が止まっているだけでない。
士郎の身体を構成する要素としての“水分”がごっそり抜け落ちている証拠だ。
凛は水差しから士郎に更に水を補給しようするが……それすら叶わない。
喉に“異物”が送り込まれるたびに士郎は咳き込み、吸収したものをそのまま吐き出し、加えて極限まで落ち込んだ体力までごっそり持って行かれてしまうからだ。
だから凛にはただ繰り返し、口移しで士郎に水分を補給するしか術はない。
―――それは男女の求愛行動ではなく、ただ命を繋ぐ為だけの接吻。
―――僅かに鼻につくのは、逆流してきた胃液と吐瀉物の酸っぱい匂い。
それでも遠坂凛にとって大切なのは、徐々に生気を取り戻しつつある愛しい人の体温。
何度その行為を繰り返したのだろうか？
士郎の口から押し戻された水と吐瀉物で、凛は顔中だけでなく、上着やその豊かな黒髪まで、ぐしょ濡れにしてしまう。
しかしそれを厭う素振りすら見せず、凛はその行為を愚直なまでに
―――そう、まるで衛宮士郎のように、ただひたすらに強い想いを籠めて繰り返す。
「……と、とお……さか………？」
ばりばりと、金網に焼き付いた肉を引き剥がすような声で、士郎がようやくそれだけ口をきく。
「―――喋らないで、士郎。お願いだから―――もう少しだけ黙っていて」
士郎の両の頬に手を添え、凛はこれ以上ないってほどの至近距離で、懇願するように云う。
遠坂凛の熱い吐息が、そして“女の匂い”が、士郎の鼻腔をくすぐる。
凛の口移しでの更なる水分補給が、士郎の心拍数を更に跳ね上げる。
目の前にあるのは、誰よりも惚れている女の子の真剣で、そして泣き出しそうな顔。
彼女にこんな表情を浮かべさせている原因が他ならぬ自分だと、未だ霞かがったような頭のまま認識した衛宮士郎の心は、今にも張り裂けんばかりになる。
だがそれと同時にココロではなく、衛宮士郎のカラダに――――別の欲求が湧き上がる。
―――ノドガ―――カワク―――
カラダガ―――カワク―――
それは生物の持つ生存本能、自己保存本能に極めて近い原始的欲求。
そして、衛宮士郎という“個体”の前にいるのは
―――その乾きを充たすのにうってつけな、極めて水気のある“モノ”。
「士郎？ どうした―――のっ!?」
目の底に宿る昏い光に凛が気付いた時には、士郎は既に行動に移っていた。
己の両頬に添えられていた凛の柔らかな、女の子らしい手を握りしめた士郎は、その手を取ったまま、強引に布団の上から上半身だけを起こす。
「ちょ、ちょっと、士郎っ!? どうしたのよ、いきなりっ!? それに身体は!?」
突然の行動にバランスを崩し、凛は士郎のお腹あたりに突っ伏すような格好になってしまう。
「―――――――――――――――――――――――」
しかし今の衛宮士郎に答えるべき言葉は存在しない。
「し、士郎っ…………？」
凛は上から覗き込む格好となった士郎の瞳に、見慣れぬ光を読み取る。
衛宮士郎に欠落していたモノ。
出会ったばかりの衛宮士郎には存在しなかったモノ。
遠坂凛に衛宮士郎が“壊れている”ことを教えたモノ。
それは―――目の前にいる“モノ”に対する強烈な独占欲だ。
「――――――――――――――――！」
普段の士郎らしくない、ぎらつくようなその眼光が意味するところに気付きながらも、
凛は身を起こすでもなく、ただじっと何かを求めるように士郎の顔を見つめている………。
一方、原始的な欲求の赴くまま、遠坂凛の上に覆い被さろうとして、
―――すんでのところで、僅かに残された理性によって、衛宮士郎は踏み止まる。
火鉢でも握ってしまったように、強く握りしめていた凛の手を跳ねのけるようにする。
いま彼の胸の中にいる少女は、衛宮士郎にとって憧れそのものだった少女。
十年前のあの日、衛宮切嗣に救われて以来“正義の味方”という、酷く漠然とした理想しか抱けなかった衛宮士郎が、初めて身近で憧れ得た存在。
最初に意識したきっかけがなんだったのかは、覚えていない。
気付いた時には、いつの間にか遠坂凛の姿を目で追うようになっていた。
彼女の一挙手一投足が、輝いて見えた。
彼女の在り方がひどく眩しいものに思えた。
それはきっと、衛宮士郎の伽藍堂の心に最初に刷り込まれたのと同質の憧憬。
必死に努力して、喰らいつくようにして、あがくようにして、
それでも決して辿り着けぬであろうことを、心の何処かで知っていながらもなお、挑み続けねばいられない、目指さないではいられない、代え難い“尊いモノ”。
そう、だからかつての衛宮士郎にとっての遠坂凛とは、
―――手を伸ばせばすぐに届きそうな距離にあって、それでも“決して触れ得ぬ憧れ”。
そんな“ヲカシガタキモノ”に俺は、一体いま何をしようとしている!?
士郎は脳の最も原始的な部位が下す指令を、ばらばらに崩れ落ちそうな理性を必死にかき集めてねじ伏せる。
そして胸の上にいる香しい少女の身体を押し退けようと再び差し伸ばした士郎の手は、温かく、柔らかなものに包み込まれる。
「とお……さか………？」
呆然と、未だ乾涸らびた舌と喉で呟く士郎を真っ直ぐ見つめる凛の瞳に、迷いや躊躇いや怯えの色はない。
そこにあるのは衛宮士郎が求めて止まぬ、純粋で、綺麗で、混じり気のない《カタチ》を具象化したような、少女の力強い笑顔。
「―――いいよ、士郎。
士郎にならわたし―――！
士郎のためにならわたし―――！」
遠坂凛の掌から伝わる温もりと、その包み込むような優しい言葉が、
衛宮士郎の脳裏に僅かに残されていた最後の理性を弾き飛ばした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「!!!? し、士郎っ!?」
極限まで張りつめたゴムが千切れたように、凛の身体の上に覆い被さった士郎は、右腕一本で凛の両の腕を、その頭の上で拘束する。
「ちょ、ちょっと、士郎！ そ、そんないきなり――っ!?」
やっと幾ばくか状況を理解した凛が咄嗟に抗議の声を上げかけるが、その言葉を紡ぐべき少女の唇は、強引に士郎の覆い被らされていた。
「―――んっ！ ―――んっっ！ ―――んっっっっ！」
しかしそれは、恋人同士の接吻と称すべきような交わりではない。
かと云って、先程まで遠坂凛が繰り返していた、命を繋ぐ為の心からの交わりでもない。
今の衛宮士郎が求めているのは心ではなく、遠坂凛のその身体のみ。
カワク――――ノドガ――――――、
カラダガ――――カワク――――――。
衛宮士郎の脳裏を占めている思念は、ただそれだけ。
いま目の前にいるのは、彼がずっと以前から憧れていた遠坂凛という少女ではなく、
―――ただ柔らかな、水気のある“生物としての女の身体”という意味しかない。
士郎は柔らかな凛の唇の防壁を突き破り、そのまま舌を差し入れようとしてくる。
最初の数秒だけは反射的に歯を食いしばりその侵入を阻止しようとしたものの、歯の一本一本までしゃぶり尽くすような士郎の舌による蹂躙に、あっという間に凛のその抵抗も蹴破られてしまう。
「っ!?」
腔内へ暴虐に乱入した士郎の舌は、反射的に引こうとする凛の舌を絡め取る。
蛇のようにまとわりつく士郎の舌を、最初無抵抗で受け止めるしかなかった凛は、しかし、いつの間にか積極的に交わりを求めるように蠢きはじめる。
舌と舌とを融かしあうような、互いの境界が曖昧になるほどの激しい粘膜同士の接触。
粘膜を媒介に、一人分しかない体内の水分を二人で分かち合うための行為。
遠坂凛は乾き飢えた士郎の心を鎮めるべくその暴虐を、精一杯に背伸びした心で、そしてまだ硬い、未成熟な身体を開いて受け入れはじめる。
―――魔術師であっても、こんな時に出来るのは普通の女の子でも出来ることだけ。
―――でも、私にはそんな普通の女の子が出来ることだって出来やしない。
そんな忸怩たる想いを抱えながら、それでも凛は士郎を精一杯受け止めようとする。
けれども、そんな少女の想いを嘲笑うように、士郎の暴虐な奔流は全てを押し流すようにますます猛り狂っていく―――。
腔内を蹂躙している間にも士郎はより深く、遠坂凛の身体を貪り尽くそうとしていた。
左腕だけで、着ていた自分の服を剥ぎ取るように脱ぎ去る。
強引すぎて衣が裂ける音がするが、そんなことなどまるでお構いなしだ。
襤褸ギレのようになった上着を、そのまま力任せに部屋の片隅へと投げつけると、凛の両の脚の間に割って入る体勢を取る。
二人の間を隔てているのは、凛のお気に入りである真っ赤な薄い上着とスカート、そしてニーソックスだけ。
そして士郎は、その露わになった胸板を凛の身体に擦り付けるように前後運動を始める。
「し……士郎っ？ ―――っ!?」
呼吸の為にようやく解放された唇からは、普段の凛からは考えられぬほど、か弱い声が漏れる。必至に唇を噛みしめながらもなお、零れ落ちてしまう声が漏れる。
士郎は前後運動を続けながら、凛の顔に満遍なく蜜が塗られているかのように、その全てを嘗め取ろうと舌を這わせる。
―――熱っぽい額を、猫のような切れ長の眼を、小作りな顎を、
―――意志の強そうな眉を、精彩に満ちた瞳を、綺麗に通った鼻を、
―――花びらのような耳朶を、細く震えるような首筋を、白くか細い咽喉を
遠坂凛の全てを舌だけで記憶し、味わい尽くすように、士郎の舌が無尽に這い尽くす。
愛しい少女の生気を、そして精気の全てを吸い付くすように顔中を蹂躙する。
だが、それでもなお――――衛宮士郎の乾きは癒されない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
服一枚を隔てた、胸板全体での強引な愛撫は、しかし凛の身体に確実に変化をもたらしていた。
―――ズボンの上からでもはっきりと判るほどにいきり立った士郎の男の象徴の熱っぽさは、スカート越しにでも否応なく少女の身体に伝わり、
―――熟す前の青い果実のように堅かった凛の小ぶりな両の乳房は上気し、士郎の胸板に擦られるたびに、その形を自在に変え、
―――その上に佇む慎ましやかな小さな花芯が、熱を持ってぷくりと持ち上がったのに気付き、凛の顔は更に朱に染まる。
「!? し、士郎っ!? ―――やっ！」
次の瞬間、凛は小さな、しかし鋭い悲鳴を上げていた。
そのほんの刹那だけ自由になった凛の両の腕は――次の瞬間、再び拘束される。
「やぁっ！ やだっ、士郎っ！ こ、こんなの、こんなのは厭っ！」
突然の悲鳴。
くぐもった凛のその叫びは、少女の服越しに漏れたものだ。
そう、士郎はよりダイレクトに遠坂凛の身体を感じる為に、左腕一本で少女の上着を強引にたくし上げたのだ。
かといって、完全に凛の服を脱がせてしまったわけではない。
首元まで上着をたくし上げられた凛は、万歳をさせられるような格好のまま、再び士郎の右腕一本で両の腕を押さえ込まれる形となる。
つまり、今の凛は頭からスカートを被せられたのと同様な状態に置かれ、その彼女の視界はなきに等しい。
無論、服越しに部屋の照明の明るさこそ感じられるが、このような男女の交わりの場においてのそれは、新月の夜の暗闇の中に突然放り出されたようなものだ。
「――やだやだやだやだやだっ！ こんなのこわいっ、こわいよっ、士郎！」
如何なる想いも受け止めようと覚悟していた凛の口から、哀願の声が漏れる。
凛は必死に首や身体までばたつかせて、その体勢を変えようとするけれども、少女の華奢な両の腕は、万力にでも締め上げられたようにピクリとも動かない。
しかし凛がその懇願の叫びをあげたのは―――決して己の視界を奪われることによって、精神的圧迫感や畏れを抱いたからだけではない。
彼女から衛宮士郎の顔が見えないということは、衛宮士郎からもまた遠坂凛の顔が見えないと云うことであり―――それは取りも直さず、今の衛宮士郎が求めているのが“遠坂凛”ではなく、ただ柔らかな“女の身体”であることをあからさまにするということだからだ。
そう、今の衛宮士郎が求めているのは、少年が憧れていた遠坂凛という少女ではなく、ただ彼の渇きを癒してくれる器だけ………。
凛の顔を侵し続けていた士郎の唇は、拘束した少女の首筋から胸元へと下りていく。
少女の真っ白な肌の上を蛞蝓のように這い回った士郎の舌は、ささやかなレースで飾られた可愛らしい白のブラジャーへと辿り着いた。
そしてブラジャー越しに、士郎は凛の慎ましやかに膨らんだ先端の突起を口に含む。
「っ！」
凛は必死に唇を噛みしめ、その衝撃に耐えようとする。
だが士郎はそんな凛の想いなどお構いなしに、次の瞬間にはこんなものでは満足出来ぬとばかりに、その白いレース布に文字通り喰らいつくと―――
「やぁっ！ いやぁっ!!」
そのまま口だけで凛のブラジャーを引きちぎった。
凛の上半身が人工的な照明の下、全て晒け出される。
少女らしいほっそりとした華奢な身体が、生命力の漲る素晴らしい身体が露わになる。
一点の染みもない真っ白な肌、小ぶりだが美しく整った形をした乳房、胸から鎖骨にかけてのなだらかな曲線。
理性などとうの昔に壊れ落ちていた筈の士郎が、それでも一流の彫刻家の鑿で彫られたような凛の、綺麗に整った美しい裸身に一瞬息を呑む。
「………し、士郎……？」
視界こそいまだ闇に包まれたままだが、その気配でようやく士郎に正気が戻ったのかと、凛は恐る恐る呼びかける。
しかし………！
「!? ひゃんっ！」
少女の淡い期待は、あっさりと弾け飛ぶ。
士郎が凛の左の乳房を、噛みつくように吸い立て始めたからだ。
しかしそれは、愛撫などと称すべきものではない。
紛れもない“吸引行為”だ。
士郎は唯一自由な左手で、更に凛の乳房の形が変形する程にたくし寄せる。そうして、彼女の乳首からその身体の中の生気の全てを吸収せんとばかりに吸い尽くす。
凛の意志とは無関係に、彼女の柔らかな椀の頂点に位置する桜色の蕾が膨らみ始め、士郎の舌にコリコリとした感触を伝えてきた。
「………やぁ、士郎、こんなの……こんなの……もう少し、もう少し優しく………」
くぐもった凛の必死の叫びを、まるで水槽の向こう側の声のように聞きながら、士郎の侵略は止まるところを知らない。
凛の純白の丘は噛みつくように吸い立てられ、その至る所に無骨な赤い痕が刻み込まれていく………。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
十数分にも及ぶ長い長い蹂躙を終え、ようやく満足したとばかりに乳房を解放した士郎の舌は、そのまま凛の臍の辺りへと、より多くの蜜が吸える場所へと降りていく。
「や、やんっ！ お臍は駄目っ！」
不意打ちのように、臍の穴に舌を差し込まれた凛は、細い腰をくねらせる。
「いやっ、そこは……そこだけは……ひゃっ！ ひゃあぁっ！」
凛は士郎の舌に激しく突き立てられながら、服の下の瞳に涙の膜を浮かべながら懇願と………そして幾ばくかの官能の混じった声をあげる。
「ひゃあぁあっ―――！ ひゃあぁあっ―――！ ひゃあぁあっ―――！」
凛は当然魔術師としての最低限の性知識を備えている。性と魔術は古来から密接に結びついているからだ。
しかし実際の体験となると衛宮士郎との一度限りの、しかも生死を賭けた極限の条件下での体験のみ。
つまり知識に反比例して、実際の性的な感覚に対しては酷く無防備なのだ。
しかも五感のうち最も大きなウエイトを占める視覚を閉ざされ、その上での羞恥と快楽のない交ぜになった感覚に、ただ翻弄されるように身体を仰け反らせる。
だがそんな凛の身体の反応など一向にお構いなしに、より多くの水分を、より多くの生気を略奪する為の侵略はやむところを知らない。
更に多くの水気を求めるべく下半身へと降りていった士郎の左手が、凛の黒いスカートに手を掛ける。
そうしてホックの場所など確認する余裕すらないまま、士郎はそのまま強引に力任せに剥ぎ取ろうとする。
「い、痛いっ！」
凛は身体を捻るようにして身を逸らそうとするが、細い両の足の間に衛宮士郎に割って入り込まれている以上、その抵抗は虚しいものでしかない。
痛みを訴える声などお構いなしに、彼女のスカートは無理矢理引き裂かれていく。
切れ切れとなった黒のそれは部屋の片隅へと投げ捨てられ、凛の下半身を覆うのは、花型のレースの施された白の薄いショーツと黒のニーソックスのみだ。
士郎の舌は更にその下方で、滾々と身体の中から湧き出る泉の存在を嗅ぎ取る。
だが凛を片手一本で拘束している今の体勢では、そこへと届くべくもない。
それでも、獣と化した衛宮士郎の決断は早かった。
拘束していた両の腕を解放すると、士郎はそのままの体勢からあっという間に凛の上着を奪い去る。
そして暗闇から解放された少女が、その自由を回復せぬ間のうちに、遠坂凛の黒のニーソックスを履いたままの両の太腿を抱えるようにして―――肩の上へと担ぎ上げるようにして固定する。
「やんっ！ ………やっ!?」
ずるずると士郎の方へと引き寄せられ、そのまま持ち上げられた凛の身体は、殆ど両の肩と後頭部だけで全身の体重を支えるような格好のまま、固定されてしまう。
つまり今の遠坂凛は、でんぐり返しの途中のような体勢で、薄いショーツ一枚越しに、その恥部を衛宮士郎の文字通りの眼前に晒しているのであり………
「―――士郎、お願いっ！ 明かりを、明かりだけは消してっ！」
凄まじい羞恥の姿勢に遠坂凛は哀願し、必死で足をばたつかせる。
だが、膝を閉じ合わせてようにもその間には士郎の頭が入り込み、加えて頭を支点に逆立ちしたようなその体勢は血流を一気に頭部へと流し込ませ、遠坂凛から冷静な思考をする余裕を奪っていた。
レースで縁取られた清楚な感じの白のショーツが、士郎の眼前に、文字通りの目と鼻の先に晒される格好になる。
少女の股間から、甘いつんという香りとともに湯気が沸き立つ。
女の泉から溢れ出た甘露の匂いが漂ってくる。
凛のショーツはそれまでの舌による愛撫で、少女の意志とは無関係に溢れ出した愛液によって濡れそぼっていた。
―――白の色は消え、透明となったその下にうっすらと、ごく薄い叢とまだ発達途上の陰唇の形状まで見て取れるほどに。
「やだっ！ やだっやだっやだっやだっやだっやだっやだぁぁっっ！
見ないでっ！ お願いだから、見ないないでっ、士郎！」
ようやくいま自分が置かれた状況を把握し、泣き声そのもので訴える凛の声は………しかし今の士郎の耳には届かない。
「ひゃ、ひゃんっ！」
透けたショーツ越しに舌による蹂躙を受けて、凛の身体が更に弓なりに跳ねる。
為す術もなく恥部を晒けだす格好になった凛は、しかし何一つ抵抗できないまま、ただ士郎の舌によってもたらされる未知の感覚に翻弄されるだけだ。
しかももがけばもがくほど、ショーツの布地が柔肉へと食い込み、ますます扇情的な光景を作り出してしまう。
「やだっ、やだあっ、やだあぁぁっっ！ お願い、お願いだから、士郎ーっ！」
今まで味わったことのない羞恥と容赦なく流れ込む血流に、凛の顔はこれ以上ないという程に朱に染まり、一瞬毎にその哀願の声も小さくなっていく………。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
夜の静寂が支配する衛宮邸の一室から、じゅるじゅると何かを啜るような音が響く。
遠坂凛という花園から懇々と湧き出る清冽な泉を、衛宮士郎が渇ききった喉を潤すべく、ただひたすらに吸い立てる音だ。
銀色の蜜にまみれ、もはや用をなさなくなったショーツは既にうち捨てられ、少女のもっとも大切なところは、少年の眼前に全て晒け出されていた。
まだ発展途上と云える形状の、凛の陰唇が露わとなる。
肉割れの始まるあたりに一叢だけ生えた恥毛は薄く、士郎の愛撫により濡れて、身体に張り付くように倒れている。
その下に佇む、剥き卵のような綺麗な恥部は、息を呑むほどに美しい。
周囲の肉の畝は、既に一度士郎の灼熱のものを受け入れたことがあるとは信じられぬほどに硬く、そして深く閉じ合わされている。
しかしその奥からは今もまた次々と潤滑油が零れだし、抉れた陰肉の僅かな割れ目からは、桜色の小陰唇と陰核を覆う包皮が僅かに覗いていた。
まさに薄紅色の花とでも称すべき、遠坂凛の花弁。
士郎の舌はその可憐な花弁を丹念になぞり、舌で転がすようにその包皮を剥がすと、中から可愛らしく膨らんだ花芽が顔を覗かせる。
「ひゃっ!?」
半ば朦朧としていた凛の意識が、その衝撃で一気に現実へと引き戻される。
花弁の頂点に息づく花芽を、士郎が何の容赦もなく、その唇でついばんできたのだ。
その衝撃で開いた桜色の陰唇の奥からは大量の蜜が溢れ出し、士郎は限りなく貪欲にそれを飲み干していく。
「ひゃぁぁぁっっ！ きゃあぁぁっっ！ ひゃぁぁぁっっ！」
可憐な尖りを、自分ですら殆ど触れたことのないその神聖な場所を、士郎の唇で引っ張られるたびに凛は狂ったように激しく身を捩る。
苦しげに喘ぐ凛の身体などお構いなしに、ただ士郎は枯れることないその愛液の泉に溺れていく。
しかし、そこまで凛の身体を貪り尽くしてもなお―――
カワク――――ノドガ――――――、
カラダガ――――カワク――――――
衛宮士郎の渇きは癒されない。
だが、それでも士郎の身体には確実に変化が起こり始めていた。
遠坂凛の身体から精気を吸い取るたびに、士郎の身体には生気が蘇りはじめる。
一滴の汗すら流すことの出来なかったその全身に、うっすらと極薄い汗の膜が浮かぶ。
そしてズボンの中で極限まで膨張した熱い怒濤の先端からは、先走りの汁が溢れ出す。
しかし、それでもなお―――衛宮士郎の精神の飢えはいっこうに満たされない。
それどころか、その身体の下で苦しげに喘ぐ遠坂凛の姿を目の当たりにして、誰もが心の何処か奥底に秘めている、薄ら暗い欲望が衛宮士郎の身体の中で鎌首をもたげはじめる。
モット――――ミズヲ―――――――
モット――――ナカヘ―――――――
突き上げるような内なるその欲望に応えるように、士郎はその舌を凛の身体の最も大切な部位に、命を生み出す女芯へと、深く、深く潜らせていく。
「ふぁっ!? やぁっ！ 士郎っ！ 士郎っ！ 士郎っ!!」
掠れた声で、しかしそれでも愛しさを隠しきれぬ声で、凛は士郎の名を叫ぶ。
舌が差し込まれるたびに、その動きに合わせて凛の肉の隘路は無意識の裡に、きゅっ、ぎゅっと締め付けてくる。
凛の“一番温かなところ”でのその反応は“母性”そのもの。
猛り狂う“男そのもの”を包み込むようなそこは―――まさに全ての命を抱き留め、育む場だ。
「！」
士郎は凛の反応に導かれるように、隆々とそびえ立つ硬い漲りを取り出す。
ズボンから飛び出た灼熱の塊が押しつけられるたびに、凛の柔らかな背中はひくひくと微動し、その先端から湧き出る欲望の先走りは、瑞々しい身体を穢していく。
男の象徴でダイレクトに感じる遠坂凛の肌の感触は、まさに麻薬そのもの。
泡に触るように柔らかく、少女の熱っぽさをそのまま包み込むような凛の皮膚と接触するだけで、士郎の熱塊は暴発してしまいそうになる。
もうこれ以上―――、一瞬だって堪えることはできそうになかった。
「し、士郎っ？」
士郎は肩の上で担いでいた凛の足を、今度は両膝あたりまで両の脇で抱え込む。
そしてそのまま押し上げるようにすると、凛の両膝は深く折り曲げられ、彼女自身の身体の上に、窮屈な形で乗る格好となる。
遠坂凛の全てが―――衛宮士郎の前に無防備に晒けだされる。
しかし、この体勢はそれと同時に、ただ貪るだけのこの交わりにおいて初めて訪れた、二人の面と向かった邂逅。
ただ本能の命ずるままに、いきり立つ己の股間の怒張を、少女の中心に突き立てようとした士郎の動きが―――時が停止したように、ぴたりと止まる。
交わる筈のない二人の視線が中空で絡み合い、溶けてていく。
猛り狂うだけの、暴虐の限りを尽くす士郎を迎え入れるようと差し伸ばされたのは、細く、たおやかな少女の両の腕。
そして遠坂凛という少女の顔に浮かんだのは、迷いのない力強い笑顔。
「―――うん、わたしなら大丈夫。だから、士郎―――！」
震えのない言葉と共に、愛しい少女に両の腕で後頭部を抱きかかえられた士郎は、
激しく脈打ち、暴れ狂う剛直を、そのまま力任せに凛の最も神聖な部分へとねじ込んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――――――っっっ！」
頭の先まで貫くようなその衝撃に、凛の身体は極限まで弓なりにしなり、両の足の爪先まで反り返ってしまう。
いくら愛液で濡れているとは云え、まだ一度しか異物を受けいれたことのない凛の身体は、無意識裡に突き立てられた異物を押し返そうとする。
それでも士郎の亀頭は、強引に肉壁を無理矢理引き剥がすように、その膣口から衛宮士郎自身が遠坂凛の身体の中に潜り込むような勢いで硬い膣内を押し進んでいく。
「ひぃっっ――――！」
ねじ込まれた熱い凶器の先端が子宮をついたらしく、挿入時の痛みこそ唇を噛みしめて耐えていた凛がたまらず悲鳴を上げる。
しかし、それでも容赦なく士郎は、痛いほど締め付ける凛の肉壺の中で、無理矢理抜き差しを始めた。
無数の襞を擦りたて、子宮を突き破らんばかりに突き上げていく。
狭い膣内を埋め尽くした熱い凶器が引き抜かれるたびに、凛のまだ未成熟な陰唇もまた幾重にも裏返される程の激しさだ。
「―――っ！ ―――っっ！ ―――っっっ！」
極限まで膨張しきった士郎の亀頭の先が、凛の子宮口を激しく叩き続ける。
初体験の時以上の痛みに襲われているであろうにもかかわらず、凛は一度悲鳴をあげたきり、それ以上の苦痛の言葉を洩らそうとしない。
それどころか抱え込んだ士郎の頭を、迎え入れるように強く抱きしめるようにする。
「―――うぅっ、―――うぅっ、―――うぅっ」
声にならぬ呻き声を洩らしながら、それでも―――士郎の獣のような蹂躙は止まらない。
花芯を串刺しにする。
子宮の奥底まで突きまくる。
膣だけではもう物足りなくて、再び両の足を両脇で抱え込むような体勢をとって、全身を擦り付けるようにして遠坂凛の身体を犯す。
そのあまりの激しさに、じりじりと布団の上にあった筈の二人の身体は畳部分へと押し出されてしまう。いつの間にかその背後には部屋の壁が迫っていた。
もうそれ以上、二人の行き場所なんて、ない。
しかし、貫いても貫いても、それでもなお―――衛宮士郎は達することは出来ない。
当然だ。そもそもこの交わりは愛の交歓でもなければ、一般的な意味での肉欲を充たすためのものでもないのだから。
そこにあるのは、より深く遠坂凛の中に潜り込みたいという、子宮回帰願望とでも云える衛宮士郎の想いだけ。
しかしこんな歪な抱き方でさえ、少女の身体は確実に衛宮士郎を抱き留めようとしはじめていた。
凛の最も奥深いところからは、交わりを更に高めるための蜜が次から次へと湧き出し、二人の結合部分からは、ぬめりを伴った愛液が飛び散る音が響く。
全身の毛穴から噴き出た汗は、潤滑油となって衛宮士郎の全身を使った交わりを更に加速させ、遠坂凛の身体を翻弄していく。
燃えるように熱い舌は、再び少女の柔らかな口内を貪り尽くし、
鍛え上げられた厚い胸板は、慎ましやかな乳房を様々な形へと変形させ、
中心の灼熱の熱い剣は、より深く鞘に入り込もうと繰り返し突き刺され、
より奥へと辿り着こうと、腰と同時に突き出されるその足には、黒のニーソックスを纏った少女の、しなやかな脚が絡みつく。
身体全体を性器と化したような交わりは、二人の間の身体の“境界線”を徐々に曖昧なものとしていく………。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
男女の交わりと云うにはあまりにも過酷なその行為は、
―――始まってから既に一時間以上の時が経過していた。
より深く、より中へ、というシンプルな想いに突き動かされるままに、衛宮士郎は遠坂凛の身体を貪欲に蹂躙し続けている。
ありとあらゆる体位から刺し貫かれ続け、そして愛しい少年にその生気を分け与え続けていた少女の身体からは、愛液などとうの昔に枯れ果てている。
潤滑液なしの交わりなど、ただ肉と肉をぶつけ合うだけの暴力でしかない。
痛みしか感じる筈のない、その凶器の蹂躙に晒され続けてもなお―――遠坂凛は一言の苦痛の声も漏らさない。
少女はその全身で、迸る少年の原始的欲求を受け止め、少女の最も奥深いところは、ただひたすらに少年を包み込むように柔らかな蠕動を繰り返す。
いまの遠坂凛を支えているのは―――たった一つの強い想いだけ。
それは衛宮士郎の魂の奥底に刻み込まれた“正義の味方”を目指すという理想と全く対極の位置にあるようでいて、それでもきっと、少年がそこへと辿り着く為に不可欠な想い。
気が遠くなるほどの苦痛に苛まれながらもなお、それでも耐え続けてきた少女の意識が徐々に白く染め上げられていく。
少年の暴虐を全身で受け止め続ける身体は疲弊の極みへと達し、少年の失ったものを補おうと供給し続ける精神は尽きかけた井戸の底を浚うように虚しく空回りを続ける。
そんな凛の意識を再び現実へと引き戻したのは―――少女の頬の上に降りかかった、とてもとても温かな透明な雫。
「………とお……さか………」
「………し、士郎？」
身体の上で前後運動を繰り返す士郎を見上げた凛が見いだしたのは、
―――理性の光を宿す、いつものあの少年の優しげで、子犬のような瞳。
「……ごめん……ごめん……とおさか……おれは……おれは……」
呻くようにそう洩らした士郎の瞳からは、後から後から、綺麗な雫がこぼれ落ちる。
自らが犯した許されざる“罪”に狂わんばかりの絶望の表情を浮かべ、
そして愛しい少女を串刺しにし続ける己の膨張を引き抜こうとする衛宮士郎を、
―――遠坂凛は決して離さじとばかりに、士郎の背中へと強く手を回す。
「………とお……さか………なんで、さ………？」
身体の中身を全てぶち撒けるような想いでそれだけ吐き出した士郎を迎えたのは、
―――太陽の光を集めたような、揺るぎない遠坂凛の笑顔。
「大丈夫よ、士郎―――わたしなら―――大丈夫！
云ったでしょ？ わたしはあなたを絶対にハッピーにしてあげるんだって！
だから―――大丈夫！ だから―――来て―――士郎っ！」
力強いその言葉と共に、枯れ果てたと思われていた凛の愛液が再び湧き出し、その身体の中心を穿つ士郎の熱い膨張を神聖な陥穽は再び柔らかく包み始める。
膣の中の無数の襞の一本一本が蠢き始め、呑み込んだ士郎の男性自身を搾り取ろうとのたくっていく。
「とおさか……っ！ とおさか……っ！ とおさか……っ！」
泣き声そのもので愛しい少女の名前を呼びながら、再び士郎は前後運動を再開する。
だけどそれは先程までの、ただ貫き突き上げるだけの動きではない。
この愛おしい少女と巡り会い、そして触れあえたという奇跡を、紛れもない現実であると確認するための、そして何よりも遠坂凛の温もりを身体の底から感じるための交わり。
「あ、ん！ あ、あ、あっ、あんっ！ あぁあんっ！ しろうっ！ しろうっっ！」
先程までは決して漏れ出なかった喘ぎ声が、凛の口をついて出始める。
依然として大粒の涙を零しながらも、士郎は緩やかに、それでいて全身を密着させるようにして、遠坂凛の身体の中へと抜き差しを繰り返す。
頬へと伝わった自らの涙を拭い去るように、士郎は少女の顔に優しく舌を這わせる。
前後動のたびに、凛の長く艶やかな黒髪は激しく乱れ、陶磁器のような白い胸の膨らみは扇情的にその姿を変え、未だ成長途上の細い腰はより深く士郎を受け入れようと揺れ動きはじめ、剥き身となった陰核は擦られ、凛を更に高みへと押し上げていく。
「あんっ！ あっあっ―――あん！ んはっ！ ふぁっ！ ―――し、しろうっ!!」
凛の声の響きが徐々に大きく、甘やかなものを秘めたものとなっていく。
「とおさか……オレ……も、もう―――っ！」
「しろうっ！ お願い！ お願いだから―――！ もう、わたし――！ わたし――っ！」
二人の口から異口同音に上がったのは、互いへの愛しさに満ち溢れた悲鳴。
その叫びと共に、凛の身体はこれ以上ないというほどに仰向き、反り返り、
黒のニーソックスを履いたその脚は、士郎の腰に蜘蛛のように深く絡まり、
士郎の逞しい背中に回された華奢な両の腕は、迎え入れるように強くかき抱き、
そしてそれと同時に、括約筋は極限まで収縮し、士郎の男根を締め上げてくる。
愛する少女の膣一杯を埋め尽くした士郎の肉刀は、無数の襞の一本一本に促されるように蠕動を開始し―――！
「とお……さかぁっ！」
「しろうっ！ しろうっ、しろうっっっ！」
―――衛宮士郎の熱い楔が、遠坂凛の“命を育む最も深いところ”へと目掛けて、生命の迸りを大量に吐き出していく。
二人の間の理性の殻はその瞬間、再び外され、そしてその機を図ったように、
「Vergessen！ ―――今晩のことは、全部忘れなさい、士郎！」
遠坂凛の唇から囁くように紡がれた呪文が、
衛宮士郎の今宵の記憶を、墨で黒く塗り潰すかのように、綺麗に消去していった………。
（続く）
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